臨時通貨法の時代(2)純アルミ貨

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烏一銭アルミ貨(昭和13年~昭和15年 アルミニウム 1000)
 烏一銭黄銅貨は、結局1年保たなかった。昭和13年11月に登場した新しい一銭貨は、素材は純アルミニウム、重さ0.9グラム。直径も縮小されたが、デザインは黄銅貨のものがそのまま引き継がれた。素材と直径が変わって、デザインはそのままということは、我が国のコイン史上、他に類例を見ない。昭和13年には桐一銭青銅貨、烏一銭黄銅貨、そして烏一銭アルミ貨の3種の一銭硬貨存在することになる。(そのことは以前にもこのブログで書いた)
  
 明治の初めに金貨類の直径が縮小されたことはあったが、このときは量目や素材の変更、品位の変更はなかった。それは別として、その明治の初め頃、西洋式の近代貨幣が鳴り物入りで作られ始めたときには、一銭銅貨は銅980、錫10、亜鉛10の素材構成で、発行当初は金ピカで、金貨と間違われたという逸話があるくらい品格のあるものだった。この先臨時通貨法の時代を点描するにあたってはどうにも筆が重くなる。

 烏一銭アルミ貨は、製造初年の昭和13年銘の未使用クラスのものはなかなか見かけない。製造枚数からすればもっと出回っているはずだが、昭和14・15年と比べると、価格的にも高い。なお、昭和14年銘には、「四」の字の書体で中が「ル」のように三画目が曲線になっているものと、角ばっているものがあり、「ル」字のものが希少であって高く評価されることになっている。(これも製造枚数からすれば、実態はどうなのかと考えてしまうのだが…)

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菊十銭アルミ貨(昭和15年~昭和18年 アルミニウム1000)
五銭アルミ貨 (昭和15年~昭和18年 アルミニウム1000)    写真は実際より拡大している

 昭和15年3月と7月の勅令で、十銭・五銭のアルミ化が決まった。銅は軍需素材として民間から引き揚げられていった。国の持てる力を総動員しても、中華民国との戦いは泥沼化する一方で、終結の見通しは立たなかった。(この時の政府・軍部ともに、戦争をどうやって終わらせるか、あるいは「戦後」というビジョンをどのように描いていたのか。あらたな戦線に活路を見出そうと、一方通行で突っ走っただけであったことを、歴史は伝えている。)
 話が逸れた。このとき発行された菊十銭・五銭のアルミ貨には、ギザ縁がある。金貨や銀貨ならばいざ知らず、白銅貨やニッケル貨、またはアルミ銅貨にはギザ縁はなかった。旭日大字五銭や、龍五銭といった銀貨ですら、ギザ縁ではないのである。素材がアルミになった途端にギザ縁が復活したというのは、まさか削り取り防止という訳ではあるまい。大きさのあまり違わない五銭と一銭を区別するために、五銭だけギザ縁にするわけにもゆかず、と一応の説明は付く。ただあまつさえ貧弱なこのコインに、とにかく貨幣としての箔を持たせようという、当局の涙ぐましい努力の結果ではなかったかと、思われてならない。

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富士一銭アルミ貨(昭和16年~昭和18年 アルミニウム1000)

昭和15年12月になると、一銭アルミ貨の形式改定が決まった。直径・量目を縮小し、デザインも変更となって、登場したのが富士一銭アルミ貨である。すでに烏一銭アルミ貨でさえ量目は0.9グラムで、現行の一円アルミ貨より軽い。新しく決まった富士一銭アルミ貨は、0.65グラム。私はこのコインを最初見たとき、裏面の図柄がよく分からなかった。それは、中央に漢数字で「一」と刻まれているだけなのだが、あまりにも単純すぎて、もっと凝ったデザインかと思った私は、それがサッと開いた絵巻物か何かに見えて、もっと詳しく見ようとルーペで拡大してみたりした。

アルミコインの軽量化
 この後、アルミ貨は臨時通貨法の特技を如何なく発揮し、昭和16年8月と昭和18年2月の二度にわたり、量目変更が行われた。いうまでもなく、目的は戦争遂行のためのアルミニウムの節約、というに尽きる。
 菊十銭アルミ貨は、昭和15年に登場した時は1.5グラム、1回目の量目変更で1.2グラム、2回目で1.0グラムとなった。五銭アルミ貨も同様に、1.2グラムから1.0グラム、0.8グラムと量目を減じている。富士一銭アルミ貨でさえ、昭和18年の量目変更時に0.55グラムとなった。これらの量目変更では、さすがに直径の縮小は行われなかったが、その分さらに薄っぺらで貧相になっていった。
 こういう事情から、菊十銭アルミ貨の昭和16年銘、昭和18年銘には、同じ記年に二種類の重さのものが混在している。五銭アルミ貨では昭和16年銘に1.2グラムと1.0グラムの二種類が混在しており、1.0グラムのものは希少とされる。富士一銭アルミ貨の昭和18年銘も、0.65グラムと0.55グラムの二種類あるわけだが、これはどちらも安価で手に入る。
 ちなみに、菊十銭アルミ貨の昭和18年銘の1.2グラム(重い方)は、ごく最近まで(といっても30年以上前だが)日本貨幣カタログにも載っていなかった。こちらも希少とされるのか、すこし高めの価格をつけられている。そうなると、五銭にも昭和18年に、1.0グラムバージョンがあるのではと気になるが、そういう話は今迄のところ、私は聞いたことがない。

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